能瓦で葺いた和の家
茅ヶ崎駅からすこし歩いたふるい分譲地に設計した夫婦 ふたりの小さな家。1階は和室が2部屋、1つは寝室に、もう1つは子供家族が帰郷したときのために襖で仕切れ、トイレと浴室+脱衣室はどちらの和室からも入れるように入り口を2つ。2階はリビング+ダイニング+キッチン+パントリーのワンルーム、これにつなげて6畳大の大きなバルコニー。バルコニーはアルミサッシをフルオープンになる ように改造、天幕を付けて外と内を一体につなげました。建て替えであることから、町並みに違和感がないように同じ配置に、高さを抑え屋根は以前と同じように瓦葺きです。 違うのは群馬県で使われていた地瓦で、復刻された「能瓦」をつかったこと。建て主さんと群馬の工場まで行って選択したこだわりの瓦です。
延床面積:101.61㎡ 1階:49.64㎡ 2階:51.97㎡ 大人2人
前から建っていたかのような外観
新しい家以外はすべて建て替え前のまま同じ、植栽を残し生け垣や塀、駐車スペースのゲートも再利用。「前から建っていたかのよう地域に馴染む家をつくりたい。」の家ができました。
「能瓦」の屋根、左官屋さんが仕上げた外壁、こだわりがぎゅっと詰まった家です。
「屋根舞台」の手仕事
これが「能瓦」です。背骨のようにきりっと通った上瓦と雨をすくう下瓦の2つの瓦で組み合わせたみごとな造形といぶし色の美しさ。富岡製紙工場の屋根瓦を焼くために集まった瓦職人の子孫が「屋根舞台」を結成して復活させた群馬県の名品です。
銅板で手づくりした樋
「能瓦」に負けないように樋は銅板で制作、樋受けは田舎くさくならないようにシンプルなラッパ型に板金屋さんが手作りしました。柔らかくやさしい風合いの杉の破風板が「日本の家」を表現していると思います。
1つ目の和室
寝室として使われています。大分産の琉球表を使った本物の琉球畳、白い漆喰、シナベニヤを白く薄化粧した建具、そして障子のシンプルな組み合わせが潔いです。
2つ目の和室
掘りごたつをつくって客間の装いです。こたつは栗材で古市家具工房の古市さんがデザイン・制作したものです。こたつを畳むと掘りこたつの中に仕舞えて、畳をのせるとフラットになり寝室として使えるふた役の和室です。
秦野の山で切った杉と檜の「たんころ材」でつくった無垢板の階段。「たんころ」とは木こり言葉で木の根元に近い曲がった部分の材のことで、これまで山に捨てられていました。
2階のリビング+ダイニング+キッチン。テーブルは栗材をつかって古市さんがデザイン・制作、椅子は奥村昭雄さんの工房がつくった「はんぺんチェアー」です。小柄な日本人にぴったりのシートハイ(座面の高さ)が座り心地抜群。
とてもコンパクトな間取りに夫婦と来客の居場所をつくり無駄のない家が出来ました。ベンチの後ろとバルコニーの障子とサッシはフルオープンに仕舞われ、木製の網戸を引き出すと風の通り抜け明るく景色のいい快適な場になります。
腰にピタリとフィットする絶妙にカーブする背板と取付高さ(職人のこだわりの技!)。
ベンチの背や和室の背もたれ、ベッドのヘッドボードに応用できます。古市健さん作。
柱と梁の美しい構造
杉の柱と梁の柔らかく美しい組み合わせ。構造的に必要な金物はDボルトと込み栓を使用してスッキリ納めました。
リビングとフラットにつながるバルコニーはスチールで製作してデッキ材を張りました。バルコニーはタープを張れるように手すりの2カ所を2mほどに、外壁にステンレスのフックを付けました。